ドビーは悪い子
- White Rabbit Entertainmen
- 2022年10月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年2月13日

オレの高校は変わっていた。
毎回中間・期末テストが終わった後に特別授業と称して学年全員でどこかへ出かけるイベントが催された。
夜から早朝にかけ真っ暗な山の中を夜通し歩かされたり、何故か映画館でターミネーター4を見させられたり、やりたくもないボーリングに行かされたりした。サボると普通に欠席扱いになる。
そういった特別授業の中で2年の時にハイキング的なものがあったと思う。普段は校舎が別で顔を会わす事のない機械科や商業科のヤツらも一同に会した。
昼食の時間となり教師から弁当が支給される。
「おいドビー」
オレのクラスのヤンキーチックなヤツが小さいのに話しかけていた。どうやらその小柄な彼はドビーと呼ばれているらしい。
オレはそいつの事をこれまで見た事がないし、ドビーと呼ばれていた事も知らない。しかしその小さく手足のか細い捕らえられた宇宙人の様なみすぼらしさ漂うフォルムから彼をドビーと表現する事が妥当であり何故ドビーと呼ばれているのか、一瞬に理解出来る程に正に彼はドビーな見た目をしていた。
その後ヤンキーとその仲間数人はドビーに対し「ドビーは悪い子ッっ!!」「ドビーは悪い子ッっ!!」とハリーポッターと秘密の部屋のあのシーンをドビーの目の前で本格的にやり始めた。
オレはそんな場面を目の前で見ていたが笑うのも悪い気がしたので気づいてない風に無表情を装っていた。しかし内心誰が付けたのか分からない適格すぎるそのネーミングセンス、本人を目の前にして気兼ねなくそんな事が出来るヤンキーの配慮の欠片すらの無さにちょっぴり感心していた。
確かその後オレはその辺に座って弁当を1人で食おうとしていたか既に食っていたと思う。そこへ散々イジられた後のドビーがやって来た。オレは紳士なので別にバカにする風でもなく至って普通にドビーと会話をして飯を食っていたのだが、何も言わないなれど心の中で「お前みたいなヤツといるとオレのランクが下がるから向こうに行けよ」と密かに思っていたのである。ヤンキーも嫌いであったがこういう負け犬的なヤツに懐かれるのも御免被りたかった。
ドビーは弁当を食べるスピードがもの凄く遅かった、おまけに小食で昼食タイムに普通サイズの弁当を全て平らげる事すら出来てなかったと思う。何でそんな華奢な体になるのか理由が分かった気がした。
何れにせよドビーなんてアダ名を付けられるという事態は本当に最悪だなと思った。
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