oh!!!!!!!!!!! マンション清掃 #5 ～持ってる持ってない論争～

持ってる持ってない。

とある日、オレは村田村とペアを組む。

村田村はオレと同級であった。勤続は5年目。初回同乗した際はオレが風邪をひいて休んだ次の日の勤務であった事を覚えている。その際には大した話をしなかったが2回目に同乗した際には移動中の車内で普段何してるのか等の話を色々したと思う。

普段何をしているのかと問われ、オレは平日も休日も大体YouTubeで動画を見てダラダラしてる事が多いと返答、あとはニコ生の底辺配信者の雑談動画を移動中YouTubeでタレ流しにしている等の事を言ったと思う。それに食いついてきて主にニコ生の有名底辺配信者やゲーム実況者の名前を上げソイツらの事を知っているかとか質問をしてきた。

オレは高校〜大学ぐらいまでは自身にハマる面白いゲーム実況者はいないかとニコ動をかなり漁ってきた過去がある。「ゲーム実況Part1」タグで検索をかけ、タイトルやプレイしているゲームに興味が湧けばそれをクリックし冒頭部分を見てソイツがオレのお眼鏡に叶う者なのか否か、センスのあるヤツなのか何も無いただのカスか、それを瞬時に判定し面白そうであれば継続するしつまらなそうならすぐ消し次に行く、そうした工程をひたすら繰り返してきた結果自分の中で「これ以上探してもこの上はないな」という存在の発見と面白いゲーム実況漁りに単純に飽きた事を持ってしてこの工場は閉鎖した。

村田村の嫁はコレリス(コレコレリスナーの意)らしい。あとゲーム実況者で言うとキヨとか好きらしい、しょうもないなと思った。

そういう様な話をしていたので「バラバラにされてスーツケースに詰められて殺されたヤツ知ってる？唯我ってヤツ、あの事件どう思った？」と問われた。オレは「コイツ持ってんなって思いましたね。」と答えた。結構ウケてた。実際この仕事を始める前ぐらいの時期に本当にそういう事を考えていたのである。

なんかよくニコ生でコメントが書かれてた子供を14回？とかレイプした事件とかその他にも暴力沙汰等で逮捕歴がすごいある。そんな彼の結末はバラバラにされた挙句スーツケースたっぷりに詰め込まれ島流しに遭う、素晴らしい。少しばかりもまともとは言えない、そんな己の肥大化した自己はスーツケースサイズに縮小され終幕。諸行無常さを体現した様な己の身で彼が表現してきたこの道程には人間の希望や儚さ醜悪さや夢や希望がたっぷりに詰まっており、今にもケースの継目から滲み出んばかりである。この唯我という人間は見所満載な持ってるヤツであった事に間違いはないと思う。最期の最後までアイツはエンターテイナーであった、とこの仕事を始める前の無職期間に本当に考えていた。

これよりも前にネット配信者やそれに限らず持ってるヤツ持ってないヤツってあるよなと、オレは富士山でネット配信をしていたヤツが滑り落ちて死亡するという事件の概要を見た際に考えていた事がある。　

事件が起きそれがネットで話題になっている当時には特に興味もなかったのだが、落ち着いた頃のしばらくしてから何故か急にその動画を見たくなり調べていたところ、経歴を含め事件の概要について語っている西村ヒロユキの動画がタイムライン上に出てきたためそれを視聴した。

なんでも長年無職状態で司法書士を目指し何度も受験している間にガンが見つかり、そういう状態の中で生きてくうちに半ば自暴自棄の様な精神状態に陥り結果富士山に着の身着のままで登ってあの結末になったのではないかという様な内容であった。

彼の最後は富士山を滑落するシーン。足を滑らせ転倒し今からどんどん加速していきますという状況で「滑るっ!」という言葉を発し、その少し後に映像は途切れて終わる。彼がその後ジャギジャギの氷山の肌に削られていき擦り下ろしリンゴヨーグルトみたいになって麓まで帰ってくる様は映像として記録されていなかった。それを見た際「ほんとコイツ持ってないな」と思った。

期待をスカされたイラつきと、「どうせなら最後まで見せろよ」という肩スカし感、最後にしょうもない中途半端なモノを残して他界。コイツの中途半端さを露わにした様なこの映像は見ていて非常にムカつかされた。だから長年無職だし、司法試験にも受からないし、ガンにもかかり、挙句の果てには足を滑らして死ぬっていうマヌケな醜態を全世界に晒す結末になんだよ。コイツの存在は彼の父親の精巣に精子として誕生した時点から既に根本的に何一つ持っていないダメな存在だったのだろう。それらの駄目要素は全て富士山から滑落して死亡するこの短い映像に集約され映っている様に思う。でもしょうがない、もうそういうキャラクターなのだ、神がもうそういう様に作ったのだ。

対して持ってるヤツというのは存在する。唯我は最後の最期までエンターテイナーとして己の身を張ってその場を湧かした。ピアキャストで有名な「やすひろ」は道を歩いてたら茶封筒を発見、中を見ると100万円の現金が入っていた。警察に届けたのだが持ち主が見つからず結局丸々本人の懐へと入った。彼等は今後の科学が発展していったとしても科学的にその証明がされる事は無いと思うが、運なのか何か違うモノなのか、それは分からないがなんとも形容する事は出来ないそんな何かを持っているヤツだとは思う。

願わくばオレは持ってるヤツでありたいと思った。

続く。